緑内障・緑内障手術
緑内障・緑内障手術

緑内障は、網膜の神経細胞(視神経)が徐々に障害を受け、視野(見える範囲)が欠けていく進行性の病気です。一度失われた視野は現在の医療では元に戻すことができないため、早期発見・早期治療が何よりも重要となります。
40歳以上の日本人における緑内障の有病率は5.0%(20人に1人)であり、2016年の統計をもとにした推定患者数は約465万人に上ります。しかし、そのうち実際に治療を受けている人はごく一部で、約89%もの人が未発見のまま潜在しているという調査結果もあります。緑内障は日本人の失明原因の第1位であり、決して他人事ではない、身近な疾患です。
私たちの目の中には、酸素や栄養を運ぶ「房水」という液体が循環しています。この房水の産生と排出のバランスによって保たれている眼球内の圧力を「眼圧」と呼び、眼球の形状を維持する役割を果たしています。
1.房水の循環
房水は「毛様体」で作られ、角膜の付け根にある「線維柱帯」というフィルターを通って、出口である「シュレム管」から排出されます。
2.眼圧の上昇
この排水経路が目詰まりしたり塞がったりすると、房水が溜まりすぎて眼圧が上昇します。
3.視神経の障害
高くなった眼圧が視神経を圧迫し、神経細胞を死滅させることで、視野が欠けていきます。
かつて緑内障は「眼圧が高い病気」と考えられていましたが、実際には眼圧が正常範囲(10~21mmHg)であっても発症する正常眼圧緑内障が日本人の緑内障の大部分を占めていることが判明しています。
これは、個々の視神経がもともと脆弱であることや、血流障害などが関与していると考えられています。
緑内障はその原因や進行の仕方によって、大きく以下のように分類されます。
原発開放隅角緑内障(広義)
房水の出口である「隅角」が開いているにもかかわらず、線維柱帯が目詰まりして眼圧が上がるタイプです。これには、眼圧が正常範囲内で進行する正常眼圧緑内障(NTG)も含まれます。
原発閉塞隅角緑内障
隅角が狭くなり、完全に塞がることで房水の流れが止まってしまうタイプです。
急性緑内障発作
急激に隅角が閉塞すると、眼圧が著しく上昇(40〜80mmHg)し、激しい眼痛、頭痛、吐き気、霧視(かすみ)、虹視症(光の周りに虹が見える)といった激しい症状が現れます。この場合は、数日以内に失明に至る恐れがあるため、緊急の治療が必要です。
続発緑内障
外傷、糖尿病、ぶどう膜炎、またはステロイド薬の使用など、他の病気や薬の影響で眼圧が上昇するタイプです。
小児緑内障
生まれつき隅角の構造に異常がある場合などに、小児期に発症するものです。
以下に該当する方は、緑内障を発症するリスクが高いため、定期的な検診が推奨されます。
加齢
40歳以上から有病率が上がります。
家族歴
血縁者に緑内障の方がいる場合。
近視
特に強い近視はリスクを高めます。
薄い中心角膜厚(CCT)
角膜が薄いと視神経がダメージを受けやすい傾向があります。
全身疾患
高血圧、低血圧、糖尿病、偏頭痛、睡眠時無呼吸症候群など。
視神経乳頭出血
検診で視神経に微細な出血が見つかる場合。

緑内障は初期から中期にかけて自覚症状がほとんどありません。そのため、以下の検査を組み合わせて多角的に診断します。
眼圧検査
目の硬さを測定します。治療効果を判定する上で最も基本的な指標です。
眼底検査
視神経の入り口である「視神経乳頭」の陥凹(へこみ)の大きさを直接観察します。
視野検査
見えない範囲(暗点)の有無や広がりを確認します。緑内障の進行度を把握するために不可欠な検査です。
光干渉断層計(OCT)
網膜の神経線維の厚みを三次元的に解析します。従来の検査では見つけられなかった「ごく早期(前視野緑内障)」の段階でも異常を検出することが可能です。
隅角検査
房水の出口の広さを確認し、緑内障のタイプを判別します。

緑内障治療の唯一の確実な根拠に基づいた方法は、眼圧を下げることです。視野を元に戻すことはできませんが、眼圧を下げることで病気の進行を遅らせ、生涯にわたって不自由のない視機能を維持することを目指します。
患者様の年齢、病期、無治療時の眼圧、余命などを考慮し、一人ひとりに合わせた「目標眼圧」を設定します。一般的には、無治療時から20〜30%の眼圧下降を目指すことが推奨されています。進行した症例や余命が長い若い患者様では、より低い目標値が設定されます。
緑内障治療の基本であり、多くの場合第一選択となります。
プロスタノイド受容体関連薬
眼圧下降効果が高く、1日1回の点眼で済むため、多くの症例で最初に選ばれます。
多剤併用と配合剤
一つの薬で不十分な場合は、作用機序の異なる薬を追加します。点眼の手間を減らし、アドヒアランス(治療継続)を高めるために、2つの成分が入った配合点眼薬も広く使われています。
点眼薬で効果が不十分な場合や副作用がある場合、または手術を避けるための選択肢として行われます。
SLT(選択的レーザー線維柱帯形成術)
線維柱帯にレーザーを照射し、房水の排出を促します。低侵襲で繰り返し行うことも可能です。
LPI(レーザー虹彩切開術)
閉塞隅角緑内障に対し、虹彩に小さな穴を開けて房水の通り道を作ります。
薬物療法やレーザー治療でも視野障害の進行が止まらない場合に検討されます。
低侵襲緑内障手術(MIGS)
iStent(アイステント)の留置や、マイクロフックを用いた線維柱帯切開術など、目への負担が非常に少ない手術です。白内障手術と同時に行うことができ、早期から中期の患者様に適しています。
濾過手術
(線維柱帯切除術・プリザーフロマイクロシャント)
房水を白目の下に逃がす新たな流出路を作る、眼圧下降効果の高い手術です。
チューブシャント手術
難治性の症例に対し、シリコン製のチューブとプレートを挿入して房水を排出させます。
緑内障は「一生付き合っていく病気」です。当院では、最新の診断機器(OCTなど)を用いた精密な検査と、患者様のライフスタイルに寄り添った最適な治療(個別化医療)を提案しています。
「手術は怖い」「点眼が大変」といったお悩みも、遠慮なくご相談ください。低侵襲手術(MIGS)などの新しい選択肢を含め、皆様のかけがえのない視界を守るために、スタッフ一同全力でサポートいたします。
40歳を過ぎたら、特別な症状がなくても眼科検診を受けましょう。その一歩が、20年後、30年後のあなたの視界を守ることにつながります。
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